東京ヒップジョイントクリニックの事務長をしております勝目(かつめ)純也です。
クリニックでまもなく勤務いたしまして2年。その間、いろいろ思いますことを連載形式でつづって参ります。
御笑覧くだされば幸いです。
患者さんは親戚のおじさん
我々クリニックで働く職員にとり、「患者様の立場にたって」あるいは「患者ファースト」というのは、常に意識していることであり、最も大切なことである。医療従事者でこれを否定する人はまずいないだろう。ただ、具体的にどのような振る舞いが患者様の立場にたっていると言えるかは難しい。人それぞれに思いも異なるし、病状もまちまちである。良かれと思ったことが余計なことだったり、遠慮していたら行き届かないと思われることもある。そんな迷った時に、目の前の患者さんが自分の親戚や友人だったらどうするだろうかと考えてみる。そうしたら迷わず一言声をかけるだろうし、より一層何をしてほしいと思っているのか想像をめぐらす筈だ。例えば買い物をした時に、求めたサイズやデザインのものが売り切れだったりする。そんな時「サイズはありません」と言われるだけより、他の店舗に在庫がないか調べてくれたり、他の良い商品を薦めてくれたら、例え今回は買わなくてもまたこの店に来たいと思うだろう。患者様に立場に立つことは、難しいことから始めるのではなく、ひとつの思いやりで実現できる事だと思う。
間違いはすぐそこからやってくる
事務の担当としても、患者様の個人情報、保険証や紹介状などを扱うことは数多い。最も注意が必要なことは患者様の大切なものの取違いを防止しなくてはならない。別の方に他の人の保険証を還したら大変なことになる。その中で日頃から確認つぐ確認である。電車の運転手のような「指さし確認」ではないが、怖いのは思い込みなので、自分への確認や患者様にも確認をさせていただくことを習慣付けなくてはならない。今は電子カルテなので、同姓同名の確認を求めてはくるがそれでも最後は人間なので間違えることはある。ただ、一人で事務をしている訳ではないのでメンバーで誤まりを見つける、気が付く姿勢や仕組みが大切になる。誰にでもうっかりはあるし、体調や気持ちによっても確認の精度は変わるのが人間である。そのためにも万が一間違いを犯しても、システムで救うことができる仕組み「フェイルセーフ」が必要であり、人と人のダブルチェックが面倒であっても実は最も確実な間違い防止なのである。
美点凝視
他人の陰口は「蜜の味」かもしれないが、ともに職場で働く仲間にとっては安易に語ることは禁物である。かの有名な国民的歴史小説作家、司馬遼太郎氏は著書で、無能な人間ほど他人の欠点がわかり、有能な人間は本人の気が付いてない長所を見抜くそうである。幕末に活躍した吉田松陰先生は何故にあれほどまでに人材を発掘できたのかは、本人ですら思ってもみなかった長所を見つけ、それを誉め評価し、成長させようとしたからである。彼が幕府に捕らわれ、牢屋に入った時に同じく捕らわれたいた札付きの常習犯罪人と接し、すぐさま長所を見抜いただけでなく、その長所を他の人で学ばせてもらおうと勉強会を開いたそうである。これで瞬く間に人は変わるそうである。困るのはこの逆である。常に他人の失敗やアラを見つけようとしている人物である。もちろん本人は、その欠点を治してもらおうと思ってやっているのだろうが、受ける側はそうは思わない。いつも人の欠点、失敗失態を指摘することを喜びとしている人物と感じるのである。これでは人はやる気を失い、成長は止まる。そう、吉田松陰先生には遠く及ばないが、まずは美点凝視から見てみることが必要なのである。