変形性股関節症の主な保存療法
変形性股関節症の保存療法で取られるのは主に以下の4つです。
体重管理
股関節への負荷を減らすため、体重の管理が大切です。
しかし、股関節の悪い患者様は運動も制限されるので、なかなか痩せられないのが現状です。
自己流のダイエットで痩せようとすると、既存の機能・能力を損ない、さらに精神的ストレスも溜まるためよくありません。
肥満の方は、栄養士の指導を受けて、しっかりしたカロリー計算に基づいた食事を摂ることをお勧めしています。
運動療法・筋力強化
体重の管理と同時に、体を支える筋力の強化も大切です。
そのため、自宅での運動療法・筋力強化をおこなっていただきます。
大腿四頭筋などの太ももの筋肉や、股関節周囲筋の筋力強化を関節に体重をかけない臥位や座位で行う必要があります。
自主トレーニングを主体とすべきで、スポーツジムにあるような器具を用いたトレーニングは、股関節症の患者様にとっては負担が大きすぎ、関節や筋肉を傷めたり、軟骨を減らしたりする場合があるので注意してください。
股関節症の患者様にとってプールでのトレーニングは理想的な方法といえます。
ただし、夏でも冷たいプールは避け、水温一定のプールで、自分の関節の状態、筋力・体力に合わせて行うことが大切です。
プール内歩行は浮力により股関節への負担が軽くなり、無理なく安全に筋肉が鍛えられます。
水深は胸の高さが理想的で、胸に水圧がかかるので、呼吸・循環機能も同時に鍛えられます。
水泳は、クロールやビート板を使用したゆっくりとしたバタ足を行なってください。
平泳ぎは行うべきではありません。なぜなら股関節の大きな動きを伴い、股関節への抵抗が強く、さらに腰も痛めやすいためです。
但し、前・初期股関節症の患者様であれば、水に浮いているようなゆっくりとした平泳ぎなら良いでしょう。
温熱療法
関節や筋肉の痛みを和らげ、血液の流れをよくします。ホットパックや極超音波のほか、温泉や家庭での入浴も効果的です。
薬物療法
消炎鎮痛剤(除痛目的)が使われますが、あくまでも対症療法(除痛)で原因療法(病気を治す)としての効果はありません。
しかも、長期連用は胃腸障害や肝臓・腎臓などへの副作用を引き起こす危険があります。
また痛みがとれて無理をしてしまえば逆に股関節症を進行させてしまいます。あくまでも他の保存療法との併用・補助と考えてください。
消炎鎮痛剤入りのパップ剤(湿布薬)や軟膏は、副作用が少なく使いやすいですが、皮膚の弱い方はかぶれに注意してください。
<注意!>
各種のサプリメント:グルコサミン、サメの軟骨、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などが、軟骨を再生するとして市販されています。かなり以前より臨床治験が行われていますが、その効果については未だに明らかではなく、医薬品としては認可されていません。服用する場合 [疼痛の改善に役立つ可能性はあるが、軟骨の再生機能については今後の研究待ち] ということを理解しておく必要があります。

変形性股関節症を悪化させないため|日常生活上の注意
変形性股関節症の保存療法では、股関節に無理な負担をかけないよう、日常生活上の注意が重要です。
1. 洋式の生活
日本式生活よりも、ベッド・椅子・洋式トイレなどの洋式生活が望ましいと言えます。
2. 運動の抑制
激しい運動や、重労働・立ち仕事は避け、長時間の歩行や、立ち座りの繰り返し動作もなるべく避けるべきです。
3. 靴の選び方
ハイヒールや底の硬い靴は避け、なるべくクッション性の高いスニーカータイプの靴を履くようにして下さい。
4. 杖の使用
杖の使用は、中殿筋(お尻の部分、主に股関節を外に開く筋肉)にかかる力を減らし、その結果、股関節にかかる負荷が減少します。
股関節への荷重は杖を使わない時の1/3となり非常に効果的です。(*1)
また、杖は患側(痛みのある側、術側)と逆の手(痛みのない側、健常側)で持ちましょう。
※1 参考:「股関節のバイオメカニクスとその臨床応用」
関連する治療法
保存療法を続けても効果がみられない場合や、症状が進行してしまった場合は、一般的に人工股関節置換術などの手術療法が検討されます。
手術に関する動画
詳しくは手術療法のページで解説しております。ご興味のある方はご覧ください。