このページのポイント
- 人工股関節置換術は、損傷した股関節を人工関節に置き換える手術で、痛みの軽減と関節機能の改善を目的とする。
- この手術は、変形性股関節症や関節リウマチなどで日常生活に支障をきたす場合に検討され、耐久性は20~30年以上とされる。
- 術後は痛みの著しい改善が期待でき、適切なリハビリによりスポーツや旅行などの活動も再開可能となる。
人工股関節置換術とは

人工股関節置換術(人工股関節全置換術)とは、加齢や病気などの原因によってすり減った軟骨や傷んだ骨を切除して、金属やプラスチックでできた人工関節(インプラント)に置き換える手術です。
上のイラストのように、骨盤側には金属製の「カップ」をはめ込み、脚側にはセラミック製や金属製の「骨頭ボール」とチタン合金製の「ステム」をはめ込みます。その間に、軟骨の代わりとしてプラスチック製の「ライナー」をはめることにより、人工股関節は股関節のなめらかな動きを再現する仕組みになっています。
また、人工股関節全置換術は、術前の検査結果にもよりますが、患者様ご本人の体力さえあれば年齢制限はなく、80代、90代のご高齢の方でも手術を受けることが可能です。
近年、人工股関節の性能が向上し、耐久性は20~30年以上とされています。そのため、使用開始のタイミングによっては、再手術をする必要がない場合もあります。最近のデータによると、日本では年間約6万件の症例が報告されています(*1)。

※1 参考:「2020年版メディカルバイオニクス(人工臓器)市場の中期予測と参入企業の徹底分析」(㈱矢野経済研究所)
人工股関節置換術を検討する時期
人工股関節置換術は、主に変形性股関節症や関節リウマチによる股関節痛、大腿骨頭壊死症などが悪化した際に受ける手術です。
痛みや違和感が少なく、日常生活に問題がない場合は、薬物療法や運動療法などの保存療法で様子を見ることが一般的です。なぜなら、手術は身体への負担が大きく、保存療法によって痛みを軽減できる限り、敢えて手術を受ける必要はないからです。
しかし、股関節の痛みが強く、日常生活に支障が出てきた場合は手術を検討するべきです。以下に挙げた自覚症状が強い場合は手術をおすすめしています。
- 思い通りに歩けない
- 痛みで眠れないことが多い
- 一定時間、身体を動かさず休んでいると関節が硬くなる
- じめじめした天気だと痛みが強い
- 運動中や運動後に関節が痛む
- 薬が十分に効かなくなった
- 以前に比べて関節の動きが悪くなった
- 階段の昇り降りが困難である
- 関節が硬くなっているまたは腫れている
- 椅子に座ったり湯船に座ったりするのがつらい
- 関節がきしむ感覚がある

人工股関節置換術のメリット

人工股関節置換術を受ける最大のメリットは、股関節の痛みが著しく改善されることです。術後すぐに以前のように歩いたり運動したりすることはできませんが、きちんとリハビリを続ければ、思いのままに歩けるようになってきます。
痛みをかばうために姿勢が悪くなっていた場合、手術後は姿勢が改善され、おしゃれを楽しむことができるようになるのも大きなメリットです。日常生活の質が向上するため、見た目にも気を遣って積極的に外出を楽しむ人が多くいます。
当院の患者様でも、手術後のリハビリをしっかりを行い、スポーツや登山、旅行などを楽しんでいる患者様がたくさんいらっしゃいます。
また、当院では傷口が小さく出血も少ない最小侵襲手術を行なっており、体に対する負荷も小さく、術後当日からリハビリを行うことが可能です。入院日数も短く、1週間~10日間ほどで退院できるので、仕事への復帰もしやすい点もメリットです。
人工股関節置換術のリスク|合併症など
もっとも多い術後のリスクは脱臼です。この場合、麻酔をかけて整復しますが、整復が出来ない場合は再手術を行います。また、時間の経過とともに人工関節がゆるんだ場合、入れ替えのための再手術が必要になる場合があります。
また、人工股関節置換術に限りませんが、術後に細菌感染を起こした場合は感染部分を洗浄するために再手術の可能性があります。また、下肢の静脈に血栓ができて血管を塞いでしまうことがあります。
人工股関節置換術|術後の生活
人工股関節置換術を受けた後はそれまでの痛みがなくなるため、日常生活が劇的に変化し、痛みがあったときはできなかった散歩やスポーツ、旅行なども楽しむことができます。
手術を受けた患者様の多くが気にされる以下について解説します。
- 手術後の仕事復帰
- 手術後に可能なスポーツ
手術後の仕事復帰
最小侵襲手術であれば、人工股関節置換術を受けるために必要な入院日数は1週間~10日間程度です。手術翌日にはリハビリを開始するため、退院時には歩けるようになります。
そのため、仕事の内容にもよりますが、身体に負担がかからないごく短時間の仕事であれば、退院後すぐに復帰できる場合もあるでしょう。在宅でパソコンを使う仕事などであれば、大きな問題はないと考えられます。ただし、退院後もリハビリを続けることは必要ですし、長時間の座りっぱなしは健康のためにもよくないので、主治医と相談しながら復帰を進めていきましょう。
手術後に可能なスポーツ
人工股関節置換術の手術後、きちんとリハビリを続ければ、以前のように思い通りに歩けるようになるだけでなく、テニスやダンス、サーフィンなどのスポーツも楽しめるようになります。ただし、スポーツの種類によって開始時期が異なったり、推奨されないスポーツもあるため、事前に主治医に相談しましょう。
股関節の痛みや違和感でお困りの方
まずは、ご自身の状態を知って、早期に原因を発見し治療を行うことが大切です。
気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。